名古屋大学 夏のテクノロジーフェスティバル
おならでもつうしんできる?
なるほど!つうしんのしくみ
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セッションコード:L4B
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対象:小学生(特に低学年・中学年におすすめ)
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定員:250名
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会場:名古屋大学 坂田・平田ホール
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日時:2024年8月28日(水)4時間目(15:20-16:50)
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他にもこんなことやってるよ
こんなことを学ぶよ
けいたい電話は、電波を使って音を遠くに届けます。でも、近いところであれば、糸を使っても音を届けることができます。そう、糸電話ですね!じつは、糸だけじゃなく、光や音を使っても通信することができます。このしくみが分かれば、「おなら」でも通信ができるかもしれません。この授業では、「おなら通信」にチャレンジします。みんな、おならで通信はできるかな?
このページでは名古屋大学 夏のテクノロジーフェスティバルのおならでもつうしんできる?について、知っておいてほしいことを書くね。
お父さん、お母さんといっしょに読んでね!
目次
- 「おなら通信」チャレンジ!
- おならでSOSを送ってみよう!(おなら通信のしくみ)
- おならのにおいでも通信はできるの?(デジタル通信の原理)
- もっと速い通信はできるの?(光をつかった通信と電波をつかった通信)
- さらに勉強するために
おまけ
「おなら通信」チャレンジ!

先生、この授業では「おなら通信」にチャレンジするって書いてあるけど、ほんとうにおならで通信するの?

もちろん。

でも、授業中にみんなが プッ プッ プー とおならしたら、教室がおならでいっぱいになってたいへんだよ。マスクをもってくるようにアナウンスしなきゃ。

それはこまったなぁ、どうしよう・・・

だいじょうぶだよ。ぼく、くさくないおならのしかた知っているもん。ぜんぜんくさくないよ。

え、どうやるの。おしえて。

はやね、はやおき、毎日ぐっすりねむること。すききらいなく、なんでもよく食べること。

なるほど。お肉ばっかり食べていると、つぎの日のおならはくさいからね。

うん。お肉じゃなくお野菜をたくさん食べるといいよ。あと体をうごかして、運動するのもいいよ。ぼくは毎日ラジオたいそうをやっているよ。

健康的でいいね。おならくんすごい!

でも、先生、おならって声みたいにだそうとおもっても、 プ〜 ってでないよ。授業のときにおならでないかも・・・

それはこまったなぁ、おならがでないと通信もできないぞ。

おならの音を録音して使ったらどう?ぼくのおならは プ〜 って、明るく元気な音がするよ。録音したおならの音はつかえる?

いいね!みんなにおならの音を録音して送ってもらおうか。それをつかった通信を考えるね。

ぼく、おもちゃのラッパをもっているけど、パフパフってぼくのおならの音とにてるよ。

パフパフラッパならくさくないから教室にもってきても大丈夫だね。それをつかって「おなら通信」をためしてみよう。

なんだか、すごく楽しそうな授業だね!きたいしてもいい?

もちろん!みんなのおならの音で通信しちゃうね。おならの音をたくさん送ってね!

うん、わかった。プゥ〜って元気な大きな音のおならを録音できるようにがんばるね!
おならでSOSを送ってみよう!(おなら通信のしくみ)

先生、おならでどうやって通信するの?おしえて。

それは授業の日までお楽しみにして。でも、ちょっとだけおしえるね。

わくわく。

おならくんはタイタニック号ってしってる?

しっているよ。ローザがのっていた船でしょ。氷山にぶつかって沈没するんだよね。ザ・ドラえもんズ スペシャルでよんだよ。

おぉ、おならくんすごい。よくしっているね。映画のほうが有名だと思うけど、ドラえもんにものっているんだね。

映画はお母さんがみたことあるって話していたよ。ヒロインのローズが船の先で手を広げるシーンが有名だって。

そのタイタニック号から世界ではじめてSOS信号が送られたんだ。

SOS信号?

SOSは英語でわたしたちの船を助けてください(Save Our Ship)のことで遭難信号なんだ。

そうなんだ。

ハハハ、しゃれだね。
当時はSOS信号をだすのに火花をつかったんだ。

火花?電波じゃないの?

そう。
火花が出るときに電波もいっしょにでるんだ。
電波は遠くまで飛ぶんだ。
だから、船から陸地まで信号をとどけることができるんだ。

でも、火花でどうやってSOS信号をあらわしたの?

おならくん、いいところに気づいたね。
火花をだしたり、火花を消したりしたの。そうすると、電波もでたり、でなかったりするでしょ。

なるほど、電波をだしたり、ださなかったりしたんだね。

そう。
さらに短い時間の火花と長い時間つづく火花の2つでSOS信号をあらわしたんだ。

短い火花と長い火花?
つまり、電波が短い時間のものと長い時間つづくものとでSOS信号をあらわしたの?

そのとおり。
短い電波は音であらわすと「ト」になるかな。
長い時間の電波は「ツー」。
その2つの組み合わせで SOS信号をあらわしたんだ。

「ト」と「ツー」。

そう。
Sは「ト」を3回、つまり「トトト」。
Oは「ツー」を3回、つまり「ツーツーツー」。

ということは、SOSは
「トトト ツーツーツー トトト」
になるの?

そのとおり。おならくんはすばらしいね!

えへへ。
ということは、おならでやると
「プップップッ プゥ〜プゥ〜プゥ〜 プップップッ」
になるの?

おぉ、すばらしい。よくわかったね。
・・・うぅん、それにしても、ちょっとだけ種明かしをするつもりだったけど、ぜんぶバレちゃったなぁ。ハハハ。
- 上記で「タイタニック号が世界初のSOSエスオーエスを発した」と説明しましたが、実際にはタイタニック号が最初ではありません。タイタニック号の悲劇と併せてSOSが最初と述べている書物も多いことからそのように書きました。印象に残りやすいですしね。より詳しく知りたい方は総務省の外郭団体である電波適正利用推進員協議会の電波学習館・第1回万国無線電信会議をご覧下さい。なお、同ページではタイタニック号の遭難モールス信号も聞けるようになっていますが、私が確認したところではうまく動作しないようです。
おならのにおいでも通信はできるの?(デジタル通信の原理)

おなら通信わかったもんね、へへへ。でも、SOSをおならでやるのは難しいなぁ。練習してもできないかも。

そうだね、ふつうの人には難しいと思うよ。でもね、おならで歌を歌うことができる人もいるんだよ。きっとこの人ならSOSもかんたんにできるとおもうよ。このページの最後に紹介するね。

先生、もしかして、おならの「音」で通信できるのなら、おならの「におい」でも通信はできるの?

おならくん、いいところに気づいたね。さすがだよ。
そう、おならのにおいでも通信はできるよ。

どうやってやるの?
おしえて。

おならの音をつかった通信では、短いおならの音「プッ」と長いおならの音「プゥ〜」の2つの音をつかったよね。

うん。
「プッ」と「プゥ〜」だね。

そう。
実はこの2つというのがポイントなんだ。

2つ?
何か違うものが2つあれば通信ができるの?

そう、そのとおり。
「プッ」と「プゥ〜」の2つ。あるいは、単に「プッ」ともう一つは何も音がしないことでもいいよ。

「プッ」と「しーん(音がしない)」ってこと?

そう。
音が「する」か「しない」か。これを「1」と「0」であらわすの。

「する」、「しない」を「1」と「0」?

そのとおり。
電波の場合だと電波が「ある」か「ない」か。

ということは、おならのにおいだと「においがする」か「においがしない」なのかな?

そのとおり。
おならのにおいがする場合を「1」、しない場合を「0」とすればいいよ。

「1」と「0」ということは、これがデジタルなの?

さすが、おならくん、そのとおりだよ。
情報を送る方と受けとる方とで2つの区別がつけば、何をつかっても通信ができるんだよ。この場合「1」と「0」をつかうのでデジタル通信というんだ。

「1」と「0」だからデジタル通信なんだね。すごい。デジタルっていうからもっと難しいのかと思っていたよ。

実はね、通信の原理としてはデジタル通信がもっともかんたんなの。

おならのにおいでデジタル通信ができるなんて、ちょっと、びっくりしちゃうな。
おならのにおいがする、しないが「1」と「0」をあらわすんだね。
なんだかすごいね!

でもね、デジタル通信にはもう一つ大事なことがあるんだ。

えっ、それは何?

それはね、時間のことなんだ。どこからどこまでが「1」の時間で、どこからどこまでが「0」の時間なのか、ってこと。

おならのにおいがする時間としない時間?

そう、そのとおり。
おならくんのおならのにおいはどのくらいの時間、におっているかな?

そうだなぁ、だいたい1分ぐらいはにおっているかなぁ。

なるほど。その場合、「1」あるいは「0」は1分おきに送ればよいね。

ということは、たとえば、「1」「1」と送りたい場合は1分おきに「プゥ〜」「プゥ〜」とおならをすればいいのかな?

そのとおり。「1」「0」「1」の場合で考えてみようか。
最初は「1」なのでおならを「プゥ〜」、
次の1分から2分までは「0」なので、おならをしないで「しーん(においがしない)」、
最後の2分から3分までは「1」なので、また「プゥ〜」とおならをすればいいよ。

なるほど、時計にあわせて1分おきにおならを「する」、「しない」で情報の「1」と「0」を送ることができるのだね。
これがデジタル通信なのか!なんだかすごい!

でもね、この方法だと「1」はおならのにおいがするからすぐにわかるけど、「0」のところ、つまり「おならをしていない」ことはわかりにくい場合があるんだ。おならのにおいが長くつづくこともあるからね。
このため、さっきのSOSでは「プッ」と「プゥ〜」の長さのちがう2つの信号をつかってあらわしたんだ。

なるほど、さすが、かしこいね!

デジタル通信は「1」と「0」で情報を伝えることができるのでかんたんなんだけど、「1」と「0」を切り替える時間がはっきりわかる正確な時計も必要になるんだ。この時計が必要というところがデジタル通信のポイントなんだよ。
もっと速い通信はできるの?(光をつかった通信と電波をつかった通信)

「おならのにおい」通信は情報を伝えるのに時間がかかるよね。なぜ時間がかかると思う?

それは、おならのにおいがなくなるまでに時間がかかるからだよ。だって、時間が短いと、前のおならがにおって「0」がわからなくなるもん!

そうだね。では、もっと速い通信をするためにはどうすればいいと思う?

この世の中で一番速いものをつかって「1」と「0」をあらわせばいいのだね。
一番速いもの、というと・・・
わかった「光」だね!

そのとおり。さすがおならくん、すごいね!
この世の中で一番速いものは「光」です。
1秒間に地球を7回半も回る速さだよ。

ということは「光がある」、「なし」、で通信をすればいいのかな?

そのとおり。実は、光も電波も電磁波のひとつなんだ。

光と電波は仲間なんだね。

光をつかった通信に光ファイバー通信があるんだ。きっとおならくんのおうちにも光ファイバーが入っているのでは?そこでつかわれているとおもうよ。

なるほど。
じゃあ、電波は?

電波はラジオやテレビ、けいたい電話などの無線通信でつかわれているよ。
光をつかう光ファイバー通信も電波をつかう無線通信のいずれもデジタル通信が多いんだよ。

たしかに光は、パッとついたり消えたりできるから、おならのにおいみたいに長い間においがつづくことがないね。しかも、この世の中で一番速い!

そう。
電波も光と同じ電磁波のひとつなので高速なんだ。

むむむ、ということは、光ファイバーも無線もこの世のなかで一番速い電磁波をつかうので、もっと高速にはできないの?

じつは電磁波があいてに届くのは速いけど、情報が届くのは、まだまだ遅いんだ。
さっき、デジタル通信で必要といった時計が難しいんだ。

時計?

そう時計。
もっとちゃんというと「1」と「0」の時間を正確にあらわすために基準となる時間のこと。
この基準となる時間を作る装置のことを発振回路というんだ。

発振回路?

そう、発振回路。
発振回路が刻む時間にあわせて「1」か「0」のいずれかを送るんだ。
なので、発振回路が正確に短い時間で刻むことでがだいじになるんだ。
短い時間で「1」と「0」を切り替えることができれば、それだけ高速にたくさんの情報を送ることができるからね。

なるほど、高速な発振回路が必要なんだね。

そう。
名古屋
大学だと
天野・本田研究室
の
久志本
真希
先生
が
研究しているよ。
世界最高速の
発振回路
ができたって
発表していたよ。

うわぁ〜すごい!

光については西澤典彦先生が研究しているよ。
名古屋大学テクノロジーフェスティバル「すごい!ひかりのふしぎ、れーざーこうせんってすごい!」の先生でもあるよ。

みんな、すごいね。
で、先生は何の研究をやっているの?

ぼくは可視光通信っていってね、目で見える光をつかった通信を研究しているんだ。
この授業でデモもやるよ。
天野浩先生が発明したLEDをつかって通信をするんだ。
天野先生の講演はぜひきいてね。ちょっとむずかしいかもしれないけど、きっとワクワクするとおもうよ。

うわぁ〜すごいなぁ〜。
ぼくも研究できるようになるかな?

もちろん。
まずは須田淳先生の「でんきのしくみ、作りかた。おもしろい!でんきのはなし」をきいてみたら?きっと研究の楽しさをおしえてくれるとおもうよ。
研究はとっても楽しいし、やりがいもあるよ。ぜひ、いっしょに研究をやろう!
でもね、実はなかなかおもうようにいかなんだ!そういうところも楽しいんだけどね、ハハハ。

いいなぁ、ぼく、大きくなったら研究者になるからね。
よろしくおねがいします。
将来、おなら通信ができるように、まいにち練習するね。
まるで話すみたいに「プッ」と「プゥ〜」のおならができるようなれるといいなぁ〜。

ハハハ。なんかちがうけど、がんばって!
さらに勉強するために
通信についてさらに勉強するためのサイトをご紹介します。
このリストはアップデートしていくので、ときどき、見に来てね。 また、お薦めのサイトがあれば是非教えてください!
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- https://www.soumu.go.jp/hakusho-kids/
- インターネットやスマホの仕組みについて、わかりやすく説明しているよ。インターネットがどうやってつながるのか、どんなふうに情報が送られるのかを楽しく学べるよ。ここの情報通信用語集も充実しているので、わからない言葉があればこのサイトで調べることができるよ。
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- https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/cybersecurity/kokumin/basic/service/
- インターネットやインターネットをつかったサービスの仕組みや安全に使うためのコツをわかりやすく説明しているよ。
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- https://www.ieice.org/jpn/uiei/hiroba.html
- 先生もこの学会の会員だよ。電話のことやインターネットのことを説明しているよ。
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- https://www.ieice.org/~cs-edit/magazine/howto.html
- デモをやる可視光通信はここに載っているのとおなじだよ。LEDをピカピカ光らせて(音声)信号を送り、太陽電池で受信するんだよ。
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- https://www.cleandenpa.net/museum/g_moku.html
- ガウス、マックスウェル、アンペール、ヘルツ、ファラデーなど電波を発見した偉人とその業績の説明や、マルコーニによる初期の無線通信の仕組みなどの説明があるよ。また、鉱石ラジオの作り方もあるので試してみると楽しいよ。
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- https://www.kodomonokagaku.com
- インターネットやコンピュータについて、楽しい記事や特集がいっぱいのサイト。たとえば衛星通信大研究はとてもおもしろいよ。ほかにも、ノーベル賞スペシャルサイトでは赤崎 勇先生、天野浩先生、中村 修二先生が発明した青色LEDのことも学べるよ。ぜひ、読んでね。
-
月間FBニュース 子供の無線教室 ~電波のフシギをやさしく学ぼう~
- 全部で10回のシリーズになっていて、電波、アンテナから無線機までくわしい説明があるよ。電波や無線通信を楽しく学ぶことができるよ。
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- http://www.museum.uec.ac.jp/60th-anniversary/zenpen/index.html
- タイタニックの無線機(マルコーニ無線機)について、もっと知りたい方はこちらも読んでね。でも、ちょっと難しいです。
おまけ
ここからは、ちょっと難かしいと思うので、お父さん、お母さんと一緒に読んでね。
おなら通信のアイデアはここから生まれた?!
「おなら」とは、「鳴らす」に「お」をつけて、「す」を取った言葉です。昔、女の人が「屁」と言うのが恥ずかしかったので、おならの音を鳴したことを「お鳴ら」と上品に言ったのが始まりです。面白いですね。
おなら通信のアイデアは平賀源内から生まれました。 ぼくもびっくりしましたが、平賀源内はおならが大好きだったみたいです。
ここから、平賀源内と彼を感服させた霧降花咲男について書いていきます。 平賀源内は、霧降花咲男について「放屁論」と「放屁論後編」いう本を書くぐらいですから、よっぽど好きだったのでしょうね。びっくりです。
平賀源内
平賀源内(享保13(1728)年 - 安永8(1780)年)は、江戸時代の学者であり発明家、作家としても知られています。
「土用の丑の日」を作った人と言うと分かるかな?
源内は通称で、たくさんの名前を使い分けていました。たとえば、絵は鳩渓、戯作者は風来山人、浄瑠璃作者としては福内鬼外、そして、生活に窮して細工物を作り売りした頃には貧家銭内と名のっていました。
「京都三条糸屋の娘 姉は十八妹は十五 諸国大名弓矢で殺す 糸屋の娘は目で殺す」の作者とのうわさもあります。
土用の丑の日
源内先生は、夏の暑い日に、ある鰻屋の店主からうなぎが売れないので困っている、何とかして欲しいと相談されました。 そこで、「本日土用丑の日」と書いて、店先のよく見えるところに貼りだすように店主に言いました。 そして、土用丑の日に「う」のつくものを食べると「無病息災」になる、と広めたところ、うなぎが飛ぶように売れ、以後、土用の丑の日にうなぎを食べる習慣が広まりました。
NHKの面白い動画がありますので、どうぞご覧ください。
エレキテル
さて、この授業では、タイタニック号の無線機を紹介しました。火花で電波を飛ばす装置のことです。 この火花を出す装置を作って一躍人気者になったのが平賀源内です。
ちなみに電波があることを世界で初めて予言したのはイギリスの理論物理学者、ジェームス・クラーク・マクスウェルです。 その後、同じくドイツの科学者ハインリヒ・ルドルフ・ヘルツが、自宅の実験室で電波の存在を初めて実証しました。 その頃の日本は新撰組が活躍していた江戸時代末期。詳しくは以下を読んでね。
源内先生が生きていたときには、まだ電波も発見されていないです。ようやく火花を出すことができるようになったころのお話しです。
さて、源内先生は、オランダで病気の治療などに使われていた機械をまねて、エレキテルを作りました。 エレキテルは摩擦によって火花(正確には静電気)を発生できる静電気発生装置です。
この浮世絵は森島中良の『紅毛雑話』に描かれた江戸時代の見世物です。エレキテルはとても評判だったようです。
右にいる人がエレキテルについたハンドルを回転させています。ハンドルが回るとエレキテルの中にあるガラス瓶がこすれて、摩擦で電気が発生します。 発生した電気は、導線を通して、台に座っている左の人へ送られます。すると、その人の頭から火花が出ます。
この図だと分かりにくいので、詳しくはこちらのNHK動画をご覧ください。
放屁論
さて、好奇心旺盛な源内先生は安永3年(1774年)に「放屁論」を書きます。「論」とありますので「放屁」つまり「おなら」のことを論じています。 と言っても、おならそのもの、というよりは当時、屁芸(おなら芸)で江戸を沸かせていた放屁男、霧降花咲男について書いています。

昔語花咲男(霧降花咲男)
出展:「日本の名著22 杉田玄白、平賀源内、司馬江漢」中央公論社、昭和46年
平賀源内「放屁論」樽林忠男訳、P.381 より引用
この浮世絵は、両国橋のほとりにある見世物小屋でおこなれているおなら芸の様子が描かれています。 のぼりに書いてあるのが「昔語花咲男(霧降花咲男)」です。たくさんの人がおなら芸の見物に訪れています。 上にいる霧降花咲男のおしりからは、ぷぅ〜とばかりに、左から、はしご、「へ」と書いた何か、そしてかすれて分かりにくいですが、何やらにわとりも描いてありますね。
霧降花咲男は、まず最初にめでたい三番叟にあわせて、おならを「トッハヒョロヒョロヒッヒッヒッ」と拍子もよく奏でます。
次に鶏の鳴く音「コッケ コッコー」にあわせて「ブッブ ブッブー」。
そして、水車です。 「ブゥブゥ」とおならをしながら、自分の体をくるくると宙返り。まるで水車が水の勢いにおされ、次々と水をくみ上げては流すようなおどりを舞います。
はしご芸にいたっては、はしごの両側の長い木になぞらえて「プーッ」「プーッ」と長いおならを2つ。後は横木になぞらえて短いのを「プッ」「プッ」「プッ」といくつか入れる。 最後に「トトト」とくさびを打つように「プププ」。
霧降花咲男を見物した人々はいたく感心し、「大笑い尻の穴から梯子が出」と絶賛したのでありました。 当然、源内先生もいたく感銘を受けたようです。
ところが、この話を聞いていたお侍さんが、源内先生にそれは間違っている、と言うのです。
「源内先生ほどの博識のある方が、おならごときに感心しているのはけしからん。そもそもおならなどは人の前でひるものではない。もし、誤っておならをしようものなら、武士は腹を切ることになるかもしれない。 げんに品川(遊郭)の何とかという女が客の前でついおならをしたところ、その座にいた者達が笑ったので、彼女はついに耐えきれなくなって、一間に隠れて自害しようとしたではないか。
このように、普通の人なら人の恥とするおならを、見世物小屋にわざわざのぼりをかけ、衆目の目にさらすとは無作法もいいところである。それで金儲けをしているとは何事か。そもそも、そんなおなら芸を見にくるやつがバカ者だと思っているのに,源内先生も悪乗りをするとは、まったくあいそがついたというところだ。」
と、こんな調子で源内先生に説教をたれはじめるのである。
これを静かに聴いていた源内先生は、お侍さんに、「あなたのおっしゃることは、まことにもってもっともです。 しかし、それだけではまだ道というものの偉大さを知っているとは言えません。 孔子は童謡もバカにしません。 私がこのおなら男をもちあげるのも、それなりの理由があるからであります。
そもそも天地にあるものの中でもっとも下品なものといえば大小便にとどめを刺すでしょう。 ところが、糞小便といった汚いものでも、すべて五穀を実らせる肥となり、万民を養うもとになるのです。
ところが、このおならばっかりは、ひった者がしばらくはお腹がすっきりして気持ちがいいだけで、まったく無益無能の不要物なのです。
たしかに、おならには音がある。しかし、太鼓や鼓のように聞けるような音でもない。においもするが香水のように使うわけにもいかない。 それどころか、人を臭がらせ、尻よりでて空に消えてゆき、肥料にもならなければ、まったく何の役にも立ちません。
このように、天地でまったく無用のものとなりはて、何の役にも立たなかったものを、この男の思いつきで、いろいろと工夫をこらし、さまざまにおならをへりわけ、大入り満員の評判となっているのです。
このおなら男は、自分自身で工夫するだけだから、師匠もいなければ口づたえもない。 ないないづくしからはじめて、発生や呼吸の調子を覚え、五音十二律も自然とそなわって、それぞれをおならでひりわけることは、ヘタな浄瑠璃よりもおならのほうが抜群にいいものです。
たかがおなら、されどおならであります。
まったく役に立たないおならであっても、心をこめて修行をすればこんなに素晴らしい芸になるのだから、もし、賢人がいて、このおならのようにいろいろと工夫をし、天下の人を救うことがあるならば、その功績はどんなに大きいことだろうかとかんがえます。 思慮をめぐらしながら修行をすれば、おならでさえも、このように役にたつものです。
わたしは、このおならの音をかりて、自暴自棄・未熟・無精のものたちの眠りをさましたいのです。
といってみたものの、どうも、うさん臭い話になりました。
あなたが、わたしの言っていることはまるで屁のようだと思われるなら、そう思われても結構です。
わたしもまた、あなたのおっしゃることを屁とも思わないだけですから。」
ようするに、源内先生は、ただ世の決まりや価値観に無批判に従うだけの多くの人にくらべて、オリジナリティに溢れ、わが道を突き進む人(霧降花咲男)をほめ讃えているのです。
さすが源内先生、研究者はこうでなくちゃ!
放屁論後編
源内先生のおならの話はまだまだ続きます。 今度はエレキテルが出てきます。
登場人物は貧家銭内という見るも見らしい浪人。何の取柄も無い男だったが、そのうちにエレキテルセイリテイトとかいう、人の体から火を出して病気を治す発電機を作り出した。
ある日、なんとかという屋敷に勤める儒者がやってきて、このエレキテルを眺めていたが、そのあげく、どのような原理によって火が出るのか、後学のために知りたいというのである。
すると、この家の主人である銭内は、こっくりとうなずいて、「書物を読むことばかりが学問ではありませんが」と言いつつ一冊の本を取り出す。その本の表紙には「昔語花咲男放屁論」と書かれていた。銭内はさっそく「放屁論」、すなわち、花咲男のおなら芸のことを、長々と話しはじめるのである。 花咲男の生い立ちから始まり、どのようにしておなら芸を身に付けたのか、また、おなら芸がいかに素晴らしく、また、評判なのか、などなど。
これを聞いていた儒者は、「わたしは、おならの講釈を聞きに来たのではない。例のエレキテルより火が出る道理を聞きたいのである。さては、わたしのことを屁のようにバカされてはおられるのでは無いか。」とかんかんになって怒りだした。
銭内はことばを和らげて、「エレキテルから火がでる道理をお聞きしたいとのことですが、この全世界をひっくるめての大理論ですから、一朝一夕に論ずるわけにはゆきません。もっとも手頃な身近なたとえをあげてお教えしようと思ったので、この放屁論をとりあげたのです。
おならが出ても火が出ても、すべてそれらはこの体という小天地から出たもの、別に不思議がることはないのです。ところが、ものの道理を良く知らない連中は、火打ち石から出る火はいつも見慣れているので変に思わず、エレキテルより出る火は、まるで邪法や魔術のように考え、からくりや操り人形と同じように思ってしまいます。
結局のところ、エレキテルを使うことで人の体から火が出る道理も、おならが出るのと同じなのであります。どちらも体から出るもの、同じです。エレキテルもヘレキテルと名前を替えれば良いのかも知れません。 自分のおならの臭いは、自分自身には分からないですよね。これと同じで、たとえ火が出たとしても大したことはありません。」 と、まじめに説明したのであります。
源内先生は、よほど、霧降花咲男のおなら芸が気に入っていたようですね。
江戸の庶民はおならが大好き?!

仙厓和尚の自画自賛(「屁なりとてあだなるものと思うなよ ぶっという字は仏なり」)
出展:佐藤清彦、おなら考、青弓社、1994年、P.37 より引用
一休が、奈良の片田舎にいおりを結んでいるとき、在家の庄左衛門という男が訪ねてきた。
帰るとき、はたと手を打って尋ねた。 「大事なことを忘れていました。どのようにすれば仏になれるのでしょうか。」
一休は、「それは簡単なことだ」と、いきなり、お尻を出すと雷のようなおならを一発。
「仏には、ここにてなるは」と答えた。
最後にご紹介するのが、放屁合戦を題材にした絵巻です。江戸時代末期のものだそうです。 上図は一部のみ掲載しています。なんせ、絵巻ですのでとても長いです。出展にリンクを貼ってありますので、ぜひ、クリックして全体をごらんください。
放屁師(屁男)
おならを自由自在に操る人がいます。 さらに、芸にまで高めていた人がいました。この芸のことを曲屁と言います。 おならの音の高さや長さ、強さをさまざまに変えることができるのです。
霧降花咲男のように、おならをすることで人を楽しませる芸人を放屁師または屁男と言います。
尾張藩士で江戸時代の名古屋の浮世絵師の猿猴庵が描いた猿猴庵合纂四集 19ページに屁男の説明がありますので、クリックしてご覧ください。
最後に、現在の放屁師として有名な方をご紹介します。
-
松下誠司
- ドリフにおならの音を提供したことがあるレジェンドです。レコードも出していて、志村けんのお気に入りだったとか。おなら音源専門店もやっています。
-
市川こいくち
- 吉本興業所属の芸人(放屁師)です。自由自在におならをだすことができます。日本より海外で有名かも。ゴットタレントの動画は抱腹絶倒です。
-
ミスターメタン(Mr Methane)
- イギリスの放屁師です。放屁師のことを英語で Flatulist と言います。さて、この方、なんと、ギネスの世界記録保持者です。しかも「おなら」で。すごいですね。ちなみに、ギネスの説明文に霧降花咲男も書いてあります。すごいですね。
この方々であれば、おなら通信はできますね。 でも、こんな特技の無い人はどうすれば良いのでしょうか? 練習してできるものでもありませんし・・・
ドラえもんの「音楽イモ」を食べるしかないかも、です。ハハハ。
ちなみに、お魚のニシンはおならで会話をするそうです。片山先生に教えてもらいました。すごいですね!
参考文献
-
責任編集 芳賀徹、「日本の名著22 杉田玄白、平賀源内、司馬江漢」、中央公論社、昭和46年
- 平賀源内「放屁論」樽林忠男訳、平賀源内「放屁論後編」樽林忠男訳
-
責任編集 久松潜一他、「日本の古典25 江戸小説集II」、河出書房新社、昭和49年
- 風来山人「放屁論」いいだ・もも訳、風来山人「放屁論後編」いいだ・もも訳
おまけに書いた話はこれら2つの文献を参考にまとめたものです。
-
佐藤清彦、「おなら考」、青弓社、1994年
一休さんのお話しはここからです。
-
浅暮三文、「我が尻よ、高らかに謳え、愛の唄を」、河出書房新社、2022年
フランス語で放屁師のことをペトマーヌと言いますが、これは、主人公のピップがフランスとの国境カタルーニャで師匠に出会い、おなら芸を身に付け、ナチスの支配下にあったパリで、ペトマーヌとしてデビューするまでの成長物語。ピップの師匠は実在の放屁師ジョゼフ・ピュジョールがモデル。ジョゼフ・ピュジョールはパリ・ムーランルージュでおなら芸を披露して一世を風靡しました。ジョゼフ・ピュジョールのおなら芸はネットでも観ることができます。
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ブルック・バーカー、 服部京子 (訳)、「せつない動物図鑑」、ダイヤモンド社、2017年
ニシンのおならのお話はここに書いてあります。
書籍以外の参考文献は本文中にリンクと共に記載してあります。